タイルの町多治見市笠原町のモザイクタイルミュージアム

多治見市モザイクタイルミュージアムタイル・陶壁プロジェクトのタイトル
Field Survey
制作現場調査

制作現場調査

 平成27年度の主な事業として、当会は、前年度に実施した建築事例調査を受けて、タイル・陶壁を実際に制作している現場、即ちタイル工場や陶壁の制作工房を調査することとした。それに先駆けて、前年度に、製造業者に対するアンケート調査を実施、全国タイル業協会、及び全国タイル工業組合名簿他掲載の計約360件に用紙を郵送し、117件の回答を得た。(アンケートの紹介ページにリンク)その中で公開可能な資料があると記入した会社は17件に留まったが、電話による追跡調査を行ったところ、対象となる資料の内容が不明のため記入しなかったケースも少なからずあったことが分かった。実行委員会としても、制作現場の調査においてどのような情報が集まるか、何が必要であるかを考えながらの遂行ということもあり、当初の予定の通りまとまった数の調査ができたとは言い難い。それでも見学を受け入れ、資料をご提供くださった各社には、ここに感謝申し上げたい。
 実地調査にあたっては、限られた時間にできるだけ有効な情報を収集するため、前半は資料を所蔵していると申し出られた会社を優先的に訪問した。後半には委員や顧問の方々から、そもそも工程を実見したり比較したことがないとの意見もあり、製造ラインの見学を重視した。調査は計5日間にわたり、13社を訪ねることができた。  調査方法については手段の確立には至らず、今後検討の必要がある。

今回は主に以下3つの方法によって実施した。

  1. 1、聞き取り調査(会社の沿革や特徴的な製品などについて経営者から話を聞く)
  2. 2、資料閲覧(会社に残る施工例の写真や、デザイン下絵、カタログなどの紙資料、あるいは製品などを閲覧する)
  3. 3、工場見学(技術について説明を受け、作業の様子などを観察する)

以上の調査の結果として、明らかになった情報とさらなる課題が見えてきた。

  1. (1)建築事例で調査した物件と、実際の技術との比較
    例えば、名古屋陶磁器会館や日本陶磁器センターなどで度々目にしたスクラッチタイルは、現在でも製造する工場があるが、連綿と技術を伝えているというより、現状に即して各社が工夫している。その中で、陶磁器会館のスクラッチタイルのような「ワラビ」は、真空土錬機の土では作りにくいという声が聞かれるなど、技術の発達と昔のタイルの表情との間の葛藤も伝わってきた。
  2. (2)歴史的背景にかかわる共通認識の抽出
    例えば戦中にはタイルが作れず代用陶磁器などを手掛けた話、輸出から国内向けに転換していった話のように、ある一定の話題については各社から共通する内容が聞かれ、業界に大きな影響を与えた社会的時代背景が浮き上がってくることが感じられた。中には、かつて八分のモザイクタイルを1枚1枚手作業で施釉したといったような、技術の発達に伴って失われた技術に関する情報も得られた。また近年、修復にかかわる注文が増えている会社が少なからず見られ、それらの会社には見本として古い資料が保管されている場合もあった。
  3. (3)工場の所在する地域と取り扱う製品との関係
    今回の調査は、土岐、常滑、多治見(笠原)という3つの地域にわたるものとなった。網羅的な調査ではなかったため、現段階では漠然とした印象と考えるべきかもしれないが、それを前提としつつも以下の特徴が感じられた。
    1. 1、土岐:湿式成形、立体的な製品。
    2. 2、常滑:土管製造を原点に持ち、土色を生かす。
    3. 3、多治見:モザイクタイルが中心。

以上の調査の結果、本プロジェクトで構築しつつあるアーカイブの、今後の充実と活用が不可欠である現状と、そのためには下記のような資料・情報を収集する必要性が感じられた。

  1. 1、各社カタログ、施工例写真
  2. 2、施工中の作業にかかわる資料(モザイク画の下絵、区割り図、施工途中の写真など)
  3. 3、修復、復元にかかわる元資料
  4. 4、技術継承、歴史等にかかわる情報(口頭を含む)

村山閑 (多治見市役所産業観光課 (多治見市モザイクタイルミュージアム担当))

制作現場調査一覧

※このうちCは商社、Eは二次メーカー、Iはミュージアムの付帯施設、Hはタイル製造を廃止し砥石メーカーとなっていますが、その他はタイルの成型から焼成までを担うタイル・メーカーである。

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