文化庁 平成26年度文化芸術振興費補助金
(地域と共働した美術館・歴史博物館創造活動支援事業)
当プロジェクトの目的は、やきものと建築に関する専門機関、専門家、そして地域住民が共働し、当該地域内における、やきものの建築装飾(タイル・陶壁)の制作と実施事例のアーカイブ化と可視化を通じて、独自の文化の検証と継承に努めることです。
昨年度は目的に沿って、次のような事業を行いました。
(1)外部専門委員への聴き取り調査を行い、アーカイブする内容を検討し、タイル・陶壁に関する基礎情報(主要建築事例の調査・関連資料情報)の収集と整理、公開という方針を決定しました。それを踏まえ、戦前に立てられた主要建築事例を中心とした16件の調査を行い、かつ、過去の建築事例に関する調査情報の整理にあたりました。
(2)関連資料の調査とデジタル化は、①の主要建築事例に関する資料を中心に2000件(3000点超)行いました。
(3)建築装飾の制作現場に郵送によるアンケート調査を行いました。これは内容をまとめるとともに、27年度の制作現場調査の基礎資料となります。
(1)シンポジウム「タイル・陶壁をとおした街の発見」を11月8日(土)に愛知県陶磁美術館にて行いました。
「近代建築研究の歩み」
飯田喜四郎氏(名古屋大学名誉教授・博物館明治村顧問)
「昭和の建物に見るタイルの魅力」
酒井一光氏(大阪歴史博物館学芸員)
「工芸と工業の狭間で~アーチストと供にタイルをつくるということ」
後藤泰男氏(LIXIL広報部文化企画G学芸員)
「陶芸家 鈴木青々の制作と陶壁」
鈴木紹陶武氏(彫刻家)
「都市表層の転用技術-街角タイルの剥離と補修」
中村裕太氏(美術家/京都精華大学・京都造形芸術大学非常勤講師)
司会: | 酒井一光氏(大阪歴史博物館学芸員) |
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パネリスト: | 後藤泰男氏(LIXIL広報部文化企画G学芸員) 中村裕太氏(美術家/京都精華大学・京都造形芸術大学非常勤講師) 村山 閑氏(多治見市産業観光課嘱託員 多治見市モザイクタイルミュージアム担当) |
以上の各発表者の報告や座談会の議論から、タイル・陶壁への認識を深め、またシンポジウム終了後に行った交流会では、一般の参加者、発表者、プロジェクトメンバーが交流し、よりオープンなタイル・陶壁談義に涌き、有意義な機会となりました。
(2)建築事例調査写真展(11/2・愛知県庁)、公募写真展「タイル・陶壁が生きる街とわたしたち」(11/26-11/30・中産連ビル)を行いました。
建築事例調査写真展(11/2)は、重要文化財に指定された愛知県庁の公開イベントとの相乗効果によって1000人を超える大変多くの来場者があり、また来場者の申し出から制作現場の調査が実現するなどの予想外の成果も得らました。
公募写真展「タイル・陶壁が生きる街とわたしたち」は、坂倉準三氏設計で、タイルが魅力的な中産連ビルで行いました。写真展への応募は36人89点を数え、県内外からの参加がありました。来場者は142名あり、タイル・陶壁業界関係者は無論、一般の方々からも貴重なタイル・陶壁の所在情報などが寄せられ、またタイルがある風景の想い出を語る方も多く、写真展の目的は達成することが出来ました。
(3)さらに本事業から派生し、協力メンバーであった多治見市においても、独自予算を用いた公募写真展「タイル・陶壁が生きる街とわたしたち」(3/22-3/29・多治見市役所駅北庁舎1階ギャラリー)が開催され、愛知県内のみならず東海地域へと、共有事業の拡大と展開を可能とするきっかけとなりました。